【JKプロレス】交流試合④

Hグループ第1試合の場所に向かうと前の試合がちょうど終わったところで、リング横で咲来が身体を動かして待機していた。間に合った。

 

咲来も夏休みの猛練習の成果が出ていた。
鋭いキックは相変わらずで、飛び技やタックルも積極的に狙っていった。
ドロップキックもいい感じに決まっていて改めてこの夏頑張ったという気持ちが湧き上がってくる。

相手は埼玉県の2年生だけど、動きを見る限りたぶん高校からプロレスを始めた選手だ。
咲来のローキックにもあまり上手く対処できていない。
ドロップキックやJネックブリーカーを連発してくる飛び技メインの選手みたいだけど、元々武道経験のある咲来なので受け身も取れている。

咲来はタックルに入って寝技に持ち込んだ。
でもなかなか技の形は作れない。
腕を取ろうとすると避けられ、足を取ろうとしてもじたばたされる。
結構長い攻防だったけど最後はロープが近くなっていてロープブレイクされ、レフェリーが制止して仕切り直しになる。
タックルには入れているけど、関節を取るところまではまだ上手くいかない。
もうあと一歩のところが上手くいかないじれったい気持ちはよくわかる。

 

咲来のキックが相手に襲いかかる。
堪らず距離を取る相手に一歩間合いを詰めてもう一発お見舞いする。
関節技が上手く決まらないと得意技に頼りたくなる気持ち、よくわかるなー。

それでも打撃で揺さぶり、飛び技を織り交ぜ、スキを突いてタックルに入った。
プロレスらしい試合になってきた。
片足取れたけど、これもロープに逃げられて関節技には入れなかった。

 

後半は咲来が攻めて、相手が堪えしのぐ展開が目立っていたけど、
最後は咲来のハイキックがクリーンヒットしKO勝ちとなった。

それまで散々ローキックで足を痛めつけ、相手の姿勢もガードも下がっていたところを狙った鮮やかな一本だった。

 

リングを降りた咲来におめでとうと声をかけて抱き合った後、一緒にアップ会場に行ってストレッチをしながら話していた。

 

「タックルめっちゃいい感じだったじゃん」

「ありがとう。この夏頑張ったもん」

 

試合が終わってもまだアドレナリンが出ているみたいで咲来の気分が高揚しているのがわかる。

 

「でも関節技なかなか決められなかった。技の練習もかなりやったんだけどね」

「あれは相手のガードが固かったって。腕も足も取らせないことに全力だったもん」

 

さっきは咲来の試合を観るために急いでストレッチを終えてしまったので、私も一緒にしっかり身体を休める。

アップ会場ではいつも通り試合を控えて身体を動かしに来ている人が多くいるけど、ここもやっぱり3年生がいない分、どこか緊張感が薄く見えた。

1・2年生だけの試合。
ここにいる人たちは来年、再来年の全国行きを争う相手になるかもしれない。
今アップ会場にいるだけでも数十人はいるけど、全国大会に行けるのはこの南関東で2人だけだ。

目の前にある他愛もない日常的な光景と、たった2人という残酷なまでの数字には、大きな隔たりがあるように感じた。

 

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