2023-12-23から1日間の記事一覧
夏休みが終わってからはさらに時間の流れが早く感じた。 授業、部活、大学の練習と、毎日やることに忙殺されている間にあっという間に秋の気配が近づいている。 朝日丘高校に入学してから半年が過ぎた。 正門のところにある木はもう青々とはしていない。 通…
「終わった?英語終わってる?ちょっと見せてよー」 「ダメだって自分でやりなよ」 伸ばしてくるあかねの手から英語のプリントを遠ざける。 まったく。油断も隙も無い。 「さっき数学教えてあげたじゃん。ケチ陽菜。あたしのも見せてあげなーい」 「いいよー…
くっ!ダメだ、振りほどけない!まずい、身体伸ばされる! 「陽菜ムダに暴れない!顎引いて冷静に!違う!後ろの手から外す!」 翔瑛女子大2年の藤本まどか。 典型的なグラップラーだ。寝技、関節技、絞技を得意としている。 私はまさに胴締めスリーパーホー…
疲れ果てた身体を引きずって自分の部屋のドアを開けると、中からもわっと厚い空気が出てきた。 私の部屋は西日が当たるので夕方はいつもこうなる。 まずはエアコンを入れて着替えを済ませ、勉強机に腰掛けた。 もうすぐ夏休みが終わる。 窓の外を見ると真っ…
「咲来ー!それじゃ腕立てになってないよー!もっと下まで下げる!」 「…はぃ」 「声ちっさい!」 「はい...!」 大学の練習はキツい。特に筋トレ。華奢な咲来にはなかなか大変だろう。 でも初日よりは全然できている。 最初は腕立て伏せ10回でもうダメそう…
苦労して進んだ距離を一気に引きずって戻される。 ロープが遠ざかる。 せっかく堪えたのに。 「いくよー!レフェリー!」 大島莉子が一気に体重を後ろにかけるのがわかった。 自分の身体がぐぐっとシャチホコ状態にされて無心にリングを叩いた。 「ギブギブ…
そう思って掴みかかろうとした瞬間だった。 視界から竹内葵の姿が消える。 タックル? いや、もう近づき過ぎてタックルには入りにくいはず。 すると胴体を持ち上げられ、足が浮くと同時に身体が前に回転し、背中から叩きつけられた。 フロントスープレックス…
強い。 私と咲来、全く違うファイトスタイルなのに大島莉子はしっかり対応し、その上で自分の得意に持ち込んでいる。 咲来がロープブレイクし仕切り直したところからローキックを決める。 バシッという音が響いた。 速い。 予備動作も最小限。 大島莉子の身…
翔瑛女子大のプロレス部の練習場はキャンパスの端の方にあった。 先輩は食堂と練習場の間を自転車で移動している。 学内を自転車で移動するのもまた新鮮だ。 案内された場所には私たちが使っている格技室よりも小さい建物があった。 エアコンも付いているの…
「うわー!正門でかい!」 さすがは私立大学。 建物は綺麗だし、入口の門がとにかく大きい。 その門の下を行き来する人はほとんどいない。 大学も夏休みに入っていて、部活のジャージを着ている人や楽器を担いだ人がたまに通り過ぎていくだけだ。 「2人とも…