【JKプロレス】プロローグ

迫力。

 

別世界のような刺激にはありふれた言葉だが、

感じたものをどう説明すればいいか、少女は他に思いつかなかった。

 

体がぶつかり合う音、周りにいる観客の熱気、

目がくらみそうになるほど煌びやかなライト、

初めて体感するものばかりでその全てに圧倒された。

 

試合が始まる前は華やかなコスチュームに目を引かれたが、

ゴングが鳴ってからの彼女たちはまるで別人だ。

 

舞い踊るように技を繰り出し、

場内に響く一撃の音は少女の心に響き渡るようだった。

 

空中に跳び上がる瞬間、鮮やかに繰り出される技の一瞬一瞬。

 

それはまるで美しく緻密なダンスのようでもあり、

生命力に満ちた芸術のようでもあった。

 

少女はその様子を息をするのも忘れて見つめていた。

 

少女はリングの上で起こっていることを理解しているわけではなかったが、

それでも目の前で繰り広げられている世界に心を揺さぶられた。

 

レスラーたちの戦いが続く中、彼女たちの情熱やほとばしる汗、

そして客席の熱狂が一つになり、会場全体が一体となっているように感じられた。

 

熱気に満ちた会場。

 

観客席からは歓声と拍手が響き渡る。

少女はまるで夢の中にいるかのような、

未知の世界に引き込まれるような感覚になった。

 

少女の胸の内がぐっと熱くなった。

この感覚の正体はわからなかったが、

この日感じたものは少女の心に深く刻まれることとなった。

 

絵日記の宿題に書きたくなるような、この夏一番の思い出。

 

暑さが盛りとなる夏休みの終わり際。

 

 

少女が女子プロレスに出会った日だった。

 

 

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