堀田先生と合流し、人の波をかきわけてリング近くの召集場所に向かった。
第1試合は赤コーナーが3年生、青コーナは1年生だ。
この3年生、見覚えあるな。
中学の大会で見たのかも、確か強かった。
気持ち的には同い年の青コーナーを応援したくなる。
でもその3年生相手に1年生が次々と攻撃を繰り出していく。
ローキックがヒット、バシッと音が響いた。
えっ、まってあの子、めちゃくちゃ強い。
試合中盤あたりでは3年生はもう防戦一方だった。
あっという間にスタミナを奪われ、関節技に捕まった。
ギャラリーからわっと声が上がる。
逃げろ!
動け!
ロープ!
と叫ぶ赤コーナーサイド。
離すな!
決めろ!
と青コーナーサイドが沸いた。
声があらゆる方向に飛び交う中、やがてゴングが鳴った。
”ただいまの第1試合、青コーナー紫苑女子大附属高校の高山美優さんが勝ちました”
高山美優。
どこかで聞いたことあったかな。
でも紫苑にそんな子いたっけ?
高校から推薦で入ったのかも。
リングから降りた高山美優を見ていると、
背が高く、ごつくはないけど力も強そう。
ベスト4まで進めば準決勝であたる。
望むところだ。
それよりまずは1回戦。同じ紫苑の1年生が相手だ。
「前田さん、頑張ってね」
「はい!」
先生に送り出され、リングに上がる。
都大会ではまだ観客は入れないから周りにいるのは出場者か関係者だ。
”これより第2試合を行います。
赤コーナー、朝日丘高校、前田さん。
青コーナー、紫苑女子大学附属高校、坂本さん”
坂本美音の名前が呼ばれると青コーナー側からの声援が沸いた。
さすが強豪校、全部員が応援に駆り出されているのだろう。
中にはきっと3年生も多くいる。
そして目の前にいるのは彼女たちを抑えて都大会出場の枠を勝ち取った選手だ。
それでもここで負けるわけにはいかない。
ゴングと同時にロックアップでがっちり組み合う。
私とほぼ変わらないくらいの身長。
パワーには分がありそうだ。
坂本美音がヘッドロックにくる。
抜け出してロープに振って、ドロップキック。
今度は坂本美音のドロップキック。
おっ、ドロップキック上手くなってる。
まずはエルボーで意識を上に向けて、
足を取ってボディスラム!
これはかわされたか…
えっ、フロントネックロック!?
ボディスラムを狙って姿勢が低くなったとこを狙われた!
くっ!
あぁ鬱陶しい!
逃げられないけど絞まってはない。
何とか振りほどいたその瞬間、
坂本美音が右足を後ろに引いているのが見えた。
まずいと思った直後に胴体に重い衝撃が走る。
坂本美音のニーリフトだ。
ヒットする瞬間に身を固めたので多少ダメージは抑えたけど重い一撃だった。
ひとまず距離をとりたい。
前蹴りとローキックで牽制しながら息を落ち着かせる。
大丈夫だ。
まだ巻き返せる。
でもあの膝は要注意だ。
下手には組み合えない。
腕を掴んでロープに振って、
ドロップキックやラリアットで少しずつダメージを与えて様子を見る。
坂本美音も同じように打撃中心で攻めてくる。
私と組み合うつもりはないみたいだ。
そうなるとダメージを与えられる技になかなか入れない。
組もうとするとすぐかわされる。
一発もらう覚悟で強引に組もうと思ってもあのニーリフトが厄介だ。
鳩尾にでも入ったら終わり。
上手く距離を詰めたとしても絡まれて寝技に持ち込まれると
相手の得意分野になってしまう。
って言ってもこのままじゃ地味にローキックで攻めているだけだ。
打撃が得意な相手とやり合ってはこっちが先に消耗する。
やるしかない。
時計は5分を回った。
今のところ相手が少しリード。
これ以上離されたくない。
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