【JKプロレス】体力測定②
放課後、格技室にぶら下がったサンドバッグを何度も蹴りつける。
このまま諦めるつもりはない。
「いいえ」
私の勧誘に対する彼女の返事だ。
いいえって…同級生との会話で使う人、初めて見た。
英語のNoを訳すときくらいしか書くこともない。
突拍子もないことを言った自覚はあるけど、
その返事に逆にこっちが戸惑っちゃった。
大塚さんの3文字の返事で会話が終了した後も彼女はじっと私を見ていた。
まずは普通の会話からしないとって思って、
50m走速かったねとか、立ち幅跳びもすごく跳んでたねとか話を振った。
何かスポーツやってるの?って聞くと、
「中学まではちょっと、武道とか、やってたの」
とようやく文章になった返事をもらえた。
そう言った時の彼女は一瞬声が明るくなったように聞こえたけど、
すぐに元の様子に戻った。
絶賛部員募集中であること、
私が経験者だから基本的なことは教えられること、
練習場所は結構自由に使えることは伝えた。
格闘技に興味がないはずがない。と思う。
ていうかそう願いたいだけかも。
でもその場で承諾ってわけにもいかないだろうし
今日のところは引き下がるしかなかった。
「武道経験者かー。あーいいなー!入ってくれないかなー!」
キックの練習を終えて畳に仰向けになる。
でも気持ちが落ち着かない。
大塚さんがやっていたのは日本拳法っていう武道らしい。
自分がやっているのもマイナースポーツだけど、正直初めて聞いた。
授業終わりに動画で観てみると思った以上に激しい。
パンチ、キック、投げ飛ばして関節技、何でもありに見えた。
プロレスは拳での攻撃は反則だけど、
その他のスキルはそのまま活かせるはずだ。
体力測定を少し見ただけだけど元々の身体能力も高い。
きっといい選手になるだろう。
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