【JKプロレス】休日③

「じゃあさらりんのカレのことも知らないの?」

「えっ!?」

 

カレ?

彼氏?

咲来の?

いや、えっ?て言うのも失礼なんだけど。

 

「咲来、彼氏いるの!?誰?クラスの男子?」

「うん。いるけど、でも中学からの人だよ」

「えー!そうなんだ!何、部活の先輩とか!?」

「ううん。道場にいた同い年の人。隣の中学」

 

何かびっくりして意味わかんないテンションで質問攻めにしてしまった。

そりゃ彼氏くらいいるよね。

いい子だし、可愛いもん。

 

道場ってことは、日本拳法の道場か

男女一緒にしんどい練習とかしてたらお互い恋心もできてくるのかな。

 

てか中学の頃からもう彼氏いたのか。

なんか急に咲来が大人びて見えてきた。

 

咲来が入部して2ヶ月くらい経つけど、
私ほんとに咲来のこと知らなかったんだ。

 

彼氏がいることもゲームが好きなことも。

 

咲来はとにかく蹴りが上手いからそのことばっか聞いてた。
別にプライベートを詮索しようってわけじゃないけど、
チームメイトのことを何も知らない自分が情けなくなった。

 

「ま、練習ハードだろうし、立ち上げたばっかってのもあって忙しかったんじゃない?ゲームしながらだと結構いろんな話するけどさー。
あ、陽菜の話とかもするんだよ」

 

そっか。

 

あかねはもしかしたら私たちのこと心配して今日誘ってくれたのか。

おちゃらけてる様で意外と冷静に周りを見ている。

妙な気遣いができるんだ。

きっとお互いのことを知らなさすぎることに気付いたのだろう。

 

何だろうこの気持ち。

 

あかねに対するありがとうと、
咲来に対する...何だろう、ごめん?みたいな気持ちが入り混じる。

 

自分が練習するためだけに咲来を引き込んでしまった、みたいな。

そんなつもりはなかった…とも言い切れないから。

 

高校に入ってから今まで必死だった。

 

新しい学校で周りから変な目で見られながら
女子プロレスサークルを立ち上げて、
一人で練習して、ようやく一人入ってくれて。

思えばあっという間の一学期だった。自分のことだけで精一杯だった。

 

「私の話って、何話したの?」

「全然男作んないって話」

「何それ。まだ高校入ったばっかだよ?あかねはどうなのよ」

「私はこれから頑張るのー。一緒にさらりん先輩にコツ教えてもらおうよ」

「確かに!それだね!」

 

他愛もない話をしてると料理が運ばれてきた。

女子が3人集まって食べ物も揃えば、
もう話が止まることは無い。

 

咲来と格闘技以外の話をしたのはほぼ初めてだけど、
これがまた面白かった。

 

私たちよりちょっと大人な感じ、
咲来らしい独特の雰囲気や考え方にあかねと「何それ!」と声を上げる。

部活の仲間だった咲来と、ようやく友達になれた気がした。

 

 

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