2023-01-01から1年間の記事一覧

【JKプロレス】練習・特訓③

7月の東京は梅雨も終わりが近づき、晴れた日は太陽の日差しがもうかなりきつくなった。 朝の7時でもそこまで涼しくはない。 今日は久しぶりの晴れで通学の自転車がほどよく気持ちいい。 紫陽花は盛りを過ぎてしまったけど、これから夏が始まる。 先月から少…

【JKプロレス】練習・特訓②

最近の練習では時間の一部を使って咲来にキックを教えてもらっている。 といっても、どちらかというとキックを防御する側の練習の方が多い。 咲来コーチの指導は容赦なかった。 咲来がローキックを打って、私がそれに対処する。 ただそれを繰り返すだけなん…

【JKプロレス】練習・特訓①

高校に入って丸二か月が経った。 大塚咲来さらが入部してからも2週間が経つ。 やっぱり咲来はのみこみが早い。 ルールを覚えるのには少し顔をしかめていたけど、たぶん大丈夫だろう。 「激しいね、思った以上に」 意外に思ったようだった。 プロの試合はエン…

【JKプロレス】都大会⑤

階段を駆け下りながらジャージを羽織ってエントランスに降りた。 駅に向かう出入口ってどっちだっけときょろきょろしていると見覚えのある横顔を見つけた。 「いた!大塚さん!」 甘めのトップスにデニムというシンプルな私服姿の彼女が私の声に振り向く。 …

【JKプロレス】都大会④

「前田さんお疲れ様。残念だったね」 「全然だめでした。もっと練習します」 1年生にして都大会進出はたいしたものだ。普通ならそう言われるだろう。 でも自分と同じ1年生がこの都大会を勝ち進んでいる。よく頑張った、とは思えなかった。 「相手の子、強か…

【JKプロレス】都大会③

やるしかない。 時計は5分を回った。 今のところ相手が少しリード。これ以上離されたくない。 組ませてはもらえないだろうけど手四つに誘って首相撲の形に。 今だ! 膝は要注意! よし!間合い詰めた! 逆にニーリフトを狙って、そのスキに後ろにまわる! 捕…

【JKプロレス】都大会②

堀田先生と合流し、人の波をかきわけてリング近くの召集場所に向かった。 第1試合は赤コーナーが3年生、青コーナは1年生だ。 この3年生、見覚えあるな。 中学の大会で見たのかも、確か強かった。 気持ち的には同い年の青コーナーを応援したくなる。 でもその…

【JKプロレス】都大会①

すっかり暖かくなり、日によっては半袖でもいいくらいだ。 駅に向かうまでの自転車は乗っていて気持ちよかった。 花粉の季節も過ぎて、梅雨までは束の間の過ごしやすい時期だ。 今日は前とは違い、都心の体育館で都大会が行われる。 でもブロック大会と同じ…

【JKプロレス】体力測定②

放課後、格技室にぶら下がったサンドバッグを何度も蹴りつける。 このまま諦めるつもりはない。 「いいえ」 私の勧誘に対する彼女の返事だ。 いいえって…同級生との会話で使う人、初めて見た。 英語のNoを訳すときくらいしか書くこともない。 突拍子もないこ…

【JKプロレス】体力測定①

「ひーなー、土日の試合どうだった?」 「あかねおはよう!準優勝!都大会出る!」 「おぉー。おめでとー。やっぱり天才レスラーは違いますなぁ。決勝の相手は強かったの?」 ブロック大会は4位以内に入ったので都大会進出が決まった。 準決勝の相手は3年生…

【JKプロレス】東京都Cブロック大会 1回戦

遠目に試合を観ている先生と合流して招集場所に向かった。 第4試合が終わり第5試合の選手がリングに上がる。 それと同時に私と先生はリング脇のスペースで出番を待った。 ゴングが鳴って両者ががっちり組み合う。 両手を合わせる手四つから始まり、一方が相…

【JKプロレス】東京都Cブロック大会 開会

まだ4月なのに今日は日差しがきつく、夏のように景色が鮮やかに見える。 試合会場までは駅から歩いて15分かかったけど、今日の試合のことで頭がいっぱいで、作戦を考えているうちにあっという間に着いたように感じる。 高校女子プロレスの試合ではプロの団体…

【JKプロレス】活動開始②

「おかえりー。遅かったわね」 「ただいま。お母さん早いじゃん」 「レッスンの時間変わったのよ。だから最近はいつもこの時間よ」 ほっそりとした母が菜箸を持ったまま玄関で出迎えてくれた。 長い髪をバレッタでまとめただけで化粧もしたままなので、今帰…

【JKプロレス】活動開始

鈍った体を元に戻さなきゃ。 身体もちょっと固くなったかも。 あーあと筋トレもしないと。 ちょっとでも体力作りできるようにって片道40分の自転車通学してるけど、それだけだと試合もたないよな。 受け身の感触は? うん、いい感じ。畳だしね。 リングの床…

【JKプロレス】入学

背中にも軽く風を感じながら、乗り慣れた自転車で街を駆け抜ける。 4月の朝はまだ肌寒いけど、自転車を漕げばひんやりした風が心地良い。 道路脇の桜の花もピークを過ぎ、優雅に舞い落ちていく。 淡いピンクの花びらが道を彩り、私の心にも春の息吹が広がっ…

【JKプロレス】プロローグ

迫力。 別世界のような刺激にはありふれた言葉だが、 感じたものをどう説明すればいいか、少女は他に思いつかなかった。 体がぶつかり合う音、周りにいる観客の熱気、 目がくらみそうになるほど煌びやかなライト、 初めて体感するものばかりでその全てに圧倒…